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zoom RSS 春風と天使・・・その4、彼女の秘密〜そして大団円へ

<<   作成日時 : 2008/09/09 18:08   >>

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彼女が打ち明けた、悲しい出来事。彼女の真心に打たれた旅人は、やがて走り屋をやめる決心をする・・・

画像

       ZZR250に乗り換えツーリングライダーに。1994年撮影。

しばらくして彼女が口を開きました。

 “わたしも走ってたの。○○道路を・・・”

一転して穏やかな口調に驚かされました。

○○道路は、当時大垂水峠(おおだるみとうげ)と並んで、

走り屋のメッカと言われたところです。

彼女の話はおよそ次のようなものでした。


彼女はかつて、

女の子ながらもバリバリの走り屋だったんだそうです。

その日も○○道路を走っていた彼女は、

どういうわけか、

1人の男性ライダーとバトルをすることになったといいます。

バトルというのは、

2台のオートバイが互いに速さを競って、

(公道で)レースを行うというきわめて危険な行為です。

僕が走っていた当時はすでにすたれていて、

ほとんど行われていませんでした。

女性の走り屋というのも珍しいですが、

男女のバトルなんて聞いたことがありません。

相手の男性は、

きっと、“女の子には負けたくない”と思ったことでしょう。

そのため、無理をしてしまったのかもしれません。

彼は、そのバトル(レース)の最中に、

事故を起こして亡くなってしまったのだそうです。


その事件が彼女にあたえた衝撃は察するにあまりあります。

彼女は自責の念に苦しんだに違いありません。

その時以来、彼女は、

“走り屋の行為”も、

“走り屋自身”も、

ツバを吐きかけてやりたいくらい、

きらいになってしまったのだそうです。


話を聞いて、

僕は、彼女がなぜあれほどまでに過激な言葉を発したのか、

理解できたような気がしました。

そして、それ以後は、

彼女の言葉をすなおに聞けるようになりました。


彼女はサーキット走行に誘ってくれたり、

近隣の遊園地に安全に走れる施設があることを教えてくれたりしました。

そのようにして、

峠に行かなくても走りを楽しめるような場所についての、

さまざまな情報を提供してくれたのです。


そうした情報の中で、

サーキットはとにかく、

その遊園地の施設とやらに興味をひかれた僕は、

そこではいったいどのくらいのスピードが出せるのか聞いてみました。

彼女いわく、

 “60キロくらい”

“・・・・・遅い”、そう思った僕は、

さらに、それがコーナーでの速度なのか、

直線でのそれなのか聞いてみました。

いわく、

 “直線の最高速で”

僕は、その遅さにがっかりしてしまい、

思わず肩を落としてしまいました。

それを見た彼女は、

一瞬動揺するようなそぶりを見せました。

しかし、次の瞬間、

飛び上がるようにして叫んだのです。


 だから死なないのよ!!


その瞬間、

僕は、全身カミナリに打たれたような激しい衝撃を感じました。

頭をガーンと殴られたような感じで、

本当に目から火が出るようでした。

彼女は僕よりずっと小柄なのに、

その声は上から降ってきたんです。

まさに、“ドッカーン”という感じでした。

僕はショックで、

少しのあいだ、わけがわからないような状態になってしまいました。

彼女の言った意味がわかったのは、

衝撃を受けてしばらくたってからのことでした。

その時の彼女のふるまいは、

それほど迫力に満ち、

すさまじいものだったのです。


僕はこの時、

彼女が、初対面でどこの誰ともわからぬ僕のような者の生命を、

本気で心配してくれているのだと知りました。


            *        *        *

僕は再びガードレールにこしかけていました。

彼女はショップの人に呼ばれて店の中にいます。

しばらくすると、

店から彼女が出てくるのが見えました。

手に何か箱のようなものを持ってこちらへ歩いてきます。

僕は、“また何か言われるのかな”と不安になりました。

しかし、彼女は何も言いませんでした。

彼女は僕の隣にこしをおろすと、

手に持った箱の口を開け、

スナック菓子を一つ僕にわたしてくれました。

袋を破りひとくち口に含んでみると、

口の中いっぱいに強烈なレモンの香りがひろがりました。

早春のたそがれ時、

そのさわやかな香りは、

ショックで重く沈んでいた僕の心をときほぐし、

春風をそそぎこんでくれたような気がしました。



お菓子を食べながら、

僕はいろいろと彼女にたずねました。

彼女はいちいち親切に答え、

また助言してくれました。

彼女の言葉のひとつひとつに、

“はい”、“はい”と返事をする僕。

それは、まるで母親と子供の会話のようでした。

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彼女と並んで腰かけた、バイクショップの道を挟んで反対側にあるガードレール。手前のはしっこに僕、その隣に彼女が腰かけた。2010年3月13日撮影。

画像

彼女がレモンパフを買ったお店。僕は、彼女がこの店に入るのを事前に目撃していた。2010年3月13日撮影。

            *        *        *

彼女と別れて帰宅すると、

僕は、その日のうちに一大決心をしました。

“走り屋をやめよう”

そう決意したのです。

彼女のような人に出会い、

このような体験をしたというのも、

きっと神様が、

“おまえいい年をして、いい加減ばかなことをするのはやめなさい”

そのように言っているのではないかと思われたからです。

一生やめられないと思っていた“走り屋”でしたが、

これを機会に、

きっぱりやめることにしました。

そして、その決意を鈍らせないため、

僕は、彼女からもらったのと同じレモン菓子を、

毎日食べることにしました。

そうすることによって、

この日のことを思い出し、

日々新たに彼女の言葉をかみしめようというのです。

僕は夕食後のデザートとして、

紅茶を飲みながら、

毎晩一つずつお菓子を食べ続けました。

それは一年間続きました。

おかげでそれ以後、

ツーリングの最中に峠道を通ることがあっても、

コーナーを前にして血が騒いでも、

その誘惑に屈して危険な走りをするようなことはなくなりました。

こうして僕は健全なツーリングライダーに戻ったのです。


最近になって、

あの時、もしも彼女の、

だから死なないのよ!!

という叫びを聞かなかったら、

今頃僕は生きていなかったんじゃないかと思えるようになってきました。

今から考えると、それほど無謀なことをしていたのです。

そうだとしたら、

彼女は僕の生命の恩人であるし、

彼女の叫び声は、

僕の魂を奈落の底から救い上げてくれた、

天使の声と言えるかもしれません。 完


 *本編の後日談、“天使との再会”をご覧になりたい方はこちら。
   “天使との再会”を見る



 春風と天使・・・その1、初心者ライダーから走り屋へ
 春風と天使・・・その2、峠の楽しみ〜女性ライダーとの出会い
 春風と天使・・・その3、彼女の発した驚きの言葉


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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
こばわ(^o^)丿
遊びにきましたよ〜

旅人さんは、元走り屋さんだったんですね(゜ロ゜) ヒョオォォ!
天使さんのおかげで、走り屋は、やめたとの事。その方がよかったですよ^^いそいじゃダメです!!
私の目指すスタイルは、のんびり走る旅ライダーです(=´∇`=) ニャン♪
今はまだ通勤ライダーが主で、せかせか乗ってる私です。

旅人さんは、今は、バイクに乗っていないとのこと。。。

旅ライダーとして復活お待ちしております。(⌒∇⌒)ノ


とまこ
2008/09/11 00:17
 とまこさん、ようこそ!

 とまこさんのブログで、とまこさんが90年代のオートバイの世界をご存じと知り、とても親近感がわきました。

 僕が走り屋をやっていた90年代初頭は、まさに、走り屋とレーサーレプリカ全盛で、今から思うと、本当に夢のように楽しい時代でした。

 とまこさんは、オートバイで通勤されているとのことですね。それって、心からオートバイが好きじゃないと、できないことだと思います。僕も数回会社にオートバイで行ったことがありますが、けっこう疲れました。だから、通勤ライダーって尊敬しちゃいます。
 これからも、オートバイに乗り続けてください。
 ピース!(^^)v
旅人
2008/09/11 01:42
コンニチハ!
以前にも書きましたが、 私はバイクに乗ったことがないので、「走り屋」だとか「ローリング族」といった人たちの気持ちは解かりませんが・・
二十歳の頃から車に乗り、結構無茶をしていた時期もある私としては、死を意識することによって味わう奇妙な高揚感だとか、生きている実感だとかは、何となく解かるような気がします。
若い頃って「怖いもの知らず」ですからね。
そんな中で、ある日旅人さんが出会った一人の行きずりの女性によって、事故の怖さ、人の生命の大切さに気づかされたのだとすれば・・それは正にあなたにとって「天使の声」であり、「運命の出会い」だったのかもしれませんね。
人間は日々成長するものです。今の旅人さんならば、きっと当時とは違う気持ちでバイクを楽しむことが出来ると思いますよ。
夢見る引きこもり☆
2008/09/11 10:25
 夢見る引きこもり☆さん、こんばんわ。

 夢見る☆さんは、二十歳くらいの頃から車を運転されていたと聞いていましたので、きっと、お若い頃はけっこう冒険されたのではないかと思っていたのですが、やはりそうでしたか(笑)。

 僕が走り屋をやっていた頃は、年齢的には、もはやそれほど若くはなかったのですが、良くない意味での若さ、すなわち未熟さというようなものがありましたね。
 ただ、今は、若さゆえの恐いもの知らずというのはありません。しかし、別の意味で何も恐いものがなくなってしまいました。
 まあ、大人なので、自分自身が責任をとれないようなことは、しないようにしようと思っています。
旅人
2008/09/11 19:37
ブログにコメントをいただきありがとうございました。
私ども夫婦もバイクに乗ります。
法定速度遵守とは申しません。
が・・・
かっ飛ばすことは絶対にしません。
「出かけたときの巣があで必ず戻る。」
大切な家族・友達・仕事仲間に心配をかけるようなことは絶対にいけませんから・・・。

のんびりまったり体全身で自然を感じることができたら幸せだと思います
おれんじ☆
2008/09/14 18:42
 おれんじ☆さん、ご訪問ありがとうございます。
 僕もまったく同じ意見です。かつては、他人の迷惑というものに、考えがいたらなかった面がありました。しかし、1人の女性ライダーのおかげでそのことに気づかされてからは、危険な走りはしなくなりました。
 当時と違い、今は自分のことを待っていてくれる人も、心配してくれる人もいませんが、もう昔のような無茶はしません。たぶん(笑)。

 もっとも僕は、今事情があってオートバイを降りているのですが。
 もし復活できたら、オートバイならではの自然を感じながらの走りがしたいですね。
 森の緑に心を癒やされたり、潮の香りに胸をふくらませたり、流れる雲に未来の幸せを予感したり・・・。
 オートバイに乗り始めの、まだピュアだった自分のように。
旅人
2008/09/14 22:11
旅人さん、今晩は♪
生来せっかちな私は、あまり長々と書かれた日記を最後まで読むことはありません.。o○
でも、今回は、内容が内容なので、それに引き込まれて、最後まで読みました。
あることがきっかけで、私は”仏教”の本に興味が湧いて、、、少しづつ読んでいます。

ここからが本題です・・・
仏教で言うところの観音様は、三十三体に姿を変えて、私たちの前に現われると言います。
「三十三とは・・・」仏教で言うところでは「無限」を意味します。

観音様は、お姿を変えて、旅人さんの命を救ったものと〜〜私は考えています。
それは、彼女との偶然の出会いではなくて、神様が与えて下さった必然なのです。

人間に姿を変えて旅人さんに命の尊さを諭されたのでしょう.。o○

こんなこと言うと、笑う人がいるかもしれませんが、、、私は真面目な気持ちで、そう思います。
旅人さんが、どのように解釈するかは、、、勿論、貴方の自由ですが・・・
つんちゃん
2008/09/15 21:05
 つんちゃん、いらっしゃい。
 長い話を読んでいただいて光栄です。

 僕の考えも、つんちゃんと近いような気がします。このようなことは、ドラマの中ならとにかく、実際には起こりえないような話です。僕は実際に体験しながらも、自身に起こりつつあることが、終始信じられないでいました。今でもそうです。とっても不思議な感じです。
 あのまま走り屋を続けて無茶をしていたら、僕は100%生きていなかったと思います。おそらく僕の寿命は、そこでつきるものではなかったのでしょう。だから、神様がそこにかかわってきたのです。それにしても、神様は、ずいぶん荒っぽい手法をとったものです。僕は今でも彼女が(思い出すと)コワイですよ。(笑)でも、そのおかげで、その後の親孝行ができたのですから、神様には感謝しなければいけませんね。
 僕は思うのですが、人間て、“死ぬべき時がこなければ死なない”ものなのではないでしょうか?
旅人
2008/09/15 22:31

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